『ルーブル・ランス』の曖昧で幻想的な佇まいに魅了されて
地域再生の起爆剤
パリ北駅からTGVで1時間程度、ランスにできたSANAAが設計したルーブル美術館別館に行ってきました。ランスと言っても、シャンパーニュ地方のランス(Reims)ではなく、ベルギー寄りのカレー地方にあるランス(Lens)です。炭鉱の町として栄え、その後衰退したままのこの地で、ビルバオのグッゲンハイムが、町の観光地化を大きく牽引し、成功をおさめたように、この美術館も地域再生の起爆剤としての重責を担っています。
「風景の中に消える」というコンセプト
敷地を平地にせず、その高低差に馴染むように平屋の建物を配置した雁行建築。反射率の高い酸化皮膜されたアルミパネルとガラスの連続面に周囲の木々が柔らかく映し出され、空に溶け込み、曖昧で幻想的な印象を与えています。サナー特有の風が吹き抜けるような空気感、透明感もそこにあります。『金沢21世紀美術館を昇華させたもの』程度の気持ちで、この地を訪れましたがスケール感が全く違っていました。
『時のギャラリー』(la Galerie du temps)
「紀元前3千年から19世紀までの全作品をひとつのスペースに時系列に展示」することがコンセプト。手前から奥へと、アルミの壁に刻まれた年代にそって空間が細長く伸び、3Dの時代年表の中に舞い込んだような感覚です。
古代ギリシャの作品が、ペルシャ帝国やファラオ時代のエジプトの作品と隣り合って並んでいたり、古代ギリシャの石像を眺め、その視線の先にバロック絵画が見えたりします。自分の立ち位置と時代がリンクしていることがとても面白いです。
「パリと違ってこの美術館の目的は、6千年の歴史の中を歩きながら、博物館的に展示物を古いものとして見るのではなく、現代まで時間が繋がっていて、その先に自分たちがいるのだということを感じてもらう場所にすること、さらに異なる地域をまたいで行くので、いろいろな異文化を勉強する場所にすることにあるのです。」(妹島さん)
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