4月 292014
 
ボルドーの都市開発を考える

 

私にとっては、ある日突然、
新古典主義の建物が『水の鏡』に映し出される幻想的な写真を見て、
なんて美しいところだろうと一目惚れ。
それが、シャトーワインで有名なボルドーであると知り、
必ず行ってみようと決めました。たった一枚の写真の訴求力です。
いくら、ワインに興味があっても、なかなか赴こうとは思いません。
ところが数年前から急に気になりだした訳です。

多くのフランス人にとっても、
ボルドーは、車の排気ガスで汚れた暗い街というイメージがあり、
2000年代以降のまちの変化は、大きな驚きだったようです。

今回、実際にボルドーを訪れることができ、目の当たりにしたものは、
環境に配慮しながら、ここに暮らす人々、先端技術、水、緑、
そして18世紀の町並みが見事に調和した姿でした。

都市計画のパンフレットなど簡単なものを読んだ程度ですが、
感動すら覚える都市開発の哲学がそこにはあります。

ボルドーのユネスコ世界文化遺産登録(2007年)では、
都市開発が、歴史遺産の保全に矛盾しないという点が評価されたようです。

その立役者は、1995年にボルドー市長に就任したアラン・ジュペ氏。
彼は、ボルドー市の再生計画において、
住民参加型でかつ持続可能な社会を目指すプロジェクトをたくさん打ち立てました。
市は、住民のエコロジー教育と啓発に力を入れ、
例えば、エコロジー憲章の作成、ワークショップなどを通して、
車社会から路面電車活用へのシフト、植物園や花壇で過ごす楽しさなど、
ジュペ氏の目指すまちづくりが、市民の望む環境社会と調和することを目指しました。

社会学で参加民主主義の理論というものがありますが、
それは、人間が、参加を通じて成長し、より良い市民になることに着目しています。
まさにそんな感じで、市民参加が熟成していったのではないでしょうか?

歴史的街並みは、ファサードの洗浄・修復が行われ見事に再生。

都市空間を歩行者や自転車、公共空間に再配分するという理念に基づいて
ガロンヌ川岸の開発や自転車道の整備もなされました。

また、2003年に最新鋭の路面電車 LRT(Light Rail Transit) が開通
市内の中心部は車の乗り入れが制限され、この路面電車が市民の足となりました。

歴史的街並みや河川空間などの都市資源を生かして整備された公共空間は、
歩行者空間のみならず休暇空間、イベント開催空間として活用されています。

この公共空間は,多様な人が共存できる環境をつくり、文化を支える基盤となり、
文化育成のためのプロジェクトが盛んに行われるようになりました。

町に人が集まり、活気に満ちてくると
さらに人が集まり、成熟した文化が生れる。
ボルドーはそういう好循環に入っているように感じます。

 

ブルス広場の前、地面に2cm程張っている水面が鏡のように建物を映し出す「水の鏡」。水が引いた状態、水が張ってる状態、スモークが立ち籠めた状態の 3 パターンがコンピューター制御されてるとか…。

 

ナショナルジオグラフィックから写真を引用

 

常に車が渋滞する狭い車道に対してガロンヌ川沿いの遊歩道の広いこと!市民がゆったりと散歩する憩いの場を優先しています。

 

市内の中心部は、車の乗り入れが制限され、LRTが、市民の足となりました。

 

最新鋭 LRT は架線まで美しい。

  •  4月 29, 2014

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