ヴェネツィアでホッと一息つける安らぎの空間 – ペギーグッゲンハイムコレクション
Venice Peggy Guggenheim Collection
過去の栄華とその後の衰退に縁取りされたドゥカーレ宮やサンマルコ広場。
特に夕暮れ時の物憂げな美しさ。
複雑に入り組んだ路地は、緑も少なく、
時として迷い込んでしまったような不安な気持ちを誘います。
美術館や教会で観るヴェネツィア派の大作の数々。
大運河から眺める豪奢な建築。
圧倒的に美しくて蕭然たるものを秘めたヴェネツィア。
そんなヴェネツィアで、ホッと一息つける安らぎの空間が
ペギーグッゲンハイムの美術館です。
彼女の趣味の良さがコレクションのみならず空間の隅々にまでいきわたっていて
本当に気持ちのよい場所なのです。
何より一人の人間の審美眼によって集められたコレクションには安心感のようなものがあります。
展示の量も丁度よく、少し見てはカフェや庭園で休み、また展示に戻る。
そんなことを繰り返して、半日でも一日でものんびりとそこで過ごす時間によって
心を満たすことができるのです。
緑溢れる庭園と彫刻に囲まれたお庭には、彼女自身が眠っていて、
多くの人が自分のコレクションを楽しんでいる様子を見守っています。
コレクションには、勿論エルンスト(一時婚姻関係にあった)の作品が 沢山あります。
カンディンスキー、ピカソ、キリコ、ミロ、モンドリアン、 シャガール、ダリ、マグリット、ポロック、ベーコン、ロスコ等多士済々。
ブランクーシ、ジャコメッティ、アルプ、ゴンザレス、ムーア、 マリーニ等の彫刻も館の内外に散在しています。
これらの一流の作家達の沢山の作品の中から、ペギーが集めたコレクションは、私の琴線に触れる作品ばかり…。
あれもこれも、好きなものだらけの大好きな場所なのです。
さて、今回のこちらの特別展は、カポグロッシ(Capogrossi) の回顧展。
あまり興味のなかったカポグロッシのへんてこな櫛のような半円形の作品でしたが
あの記号のような形の誕生からその成長を時系列で眺めるうちに
自然と彼の世界に入っていくような、そんな構成になっていて
すっかりそれにハマってしまいました。
「記号」で空間をうめる。
それは、小さなブロックで立体を作るのに似ています。
そしてその記号自体、延びたり縮んだり、自由自在。
篆刻風あり、モンドリアン風あり。
単なる「記号」なはずなのに、その「記号」がうごめくさまは、
何か生き物のようにも見えます。
線路の上を走る汽車のように見えたり、あるいは、象の行進のように見えたり。
自分の言葉を見つけたアーチストは強い。
とにかく、それぞれの作品が楽しそうだし、次々に何かアイディアが湧いてくるのが見えるようです。
同じ形の「記号」が、サイズを自由に変える。
または、1つ1つの「記号」が集まって、全体でまた同じ形を構成する。
あるいは色の反転。
最初はやや遠慮がちに登場したかに見えるこの「記号」は、
すぐに彼のすべてになり、
まさに水を得た魚のように、
自由に生き生きと、独自の作品を創り上げていきました。
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