4月 072013
 
カルロ・スカルパのカステル・ヴェッキオ美術館

 

サローネに行く前に、ヴェローナでワインの展示会 Vini d’Italia の仕事をしている友人と合流。イタリア全土のワインメーカーが一堂に会するこの展示会で、ワインを試飲して廻るのも魅力ですが、一番の目的は、ヴェローナ領主であったスカラ家の14世紀の古城をカルロ・スカルパが美術館にリノベーションしたCastello Vecchio を訪れることでした。

 

入室した瞬間、出口までが見通されます。透視図的な景観で、静かに奥へと誘うような印象。 8m四方の5室の展示室が、アーチの分厚い壁で分割されて「明るく広い」展示空間が「暗く狭い」小空間を挟みながら連結。第一室左の後ろ向きの彫刻は、鑑賞者に後ろを振り返らせるための仕掛け。視線を意図的にコントロールしています。

 

粗い白肌の壁に拡散する自然光と陰影の織りなす美しさは、完璧にデザインされていて、この採光が彫刻に精神性を与えています。

 

入室した瞬間から退室までずっと眺めることになる正面の円形の建具と格子戸のデザインは、日本建築の影響が明らかですが、完全に彼の中で消化され独自の美を生み出しています。

 

建物には、ほとんど手は加えられておらず、新たに造作されたコンクリートやキャストアイロンの見事な細部が、オリジナル部分を際立たせ美しく調和しています。温かい感覚と冷たい感覚、人工的なものと自然なもの、黒いスチールと白い石や赤銅色のスタッコ(多分)、均一なものと不均一なもの、曲線と直線。計算され尽くした対比の妙。工芸品のような存在感があるディテールの数々。

 

 

 

 

 

 

 

  •  4月 7, 2013

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